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厚生労働省腎疾患対策事業 糖尿病性腎症の病態解明と新規治療法確立のための評価法の開発 和田班の平成21-23年度の取り組みについて

研究要旨
糖尿病とその合併症の克服は厚生労働行政、医学的、社会的ならびに医療経済上の重要な課題であり、その克服は国民の強い願いである。そこで本研究において、糖尿病性腎症の予後改善にむけて、1)糖尿病性腎症レジストリーによるデータベース構築と拡充、2)病期分類改訂にむけた提言案策定、3)バイオマーカー、新規治療法開発の基盤研究を行った。本研究の全体研究として、尿検体収集を伴った糖尿病性腎症レジストリーを構築し、拡充している。本レジストリー(JDN-CS)は日本腎臓学会が推進している腎臓病総合レジストリーシステムと連関し、平成23年12月末現在、420例(男性 269例、女性 151例、平均年齢 65.4±10.7歳)が登録された。また、尿検体収集例は228例であった。さらに214例の経時データが登録された。今後も症例登録、データの集積を継続し、本邦の糖尿病性腎症の病態解析、予後評価を行う予定である。すでにレジストリー登録例の尿検体を用いたバイオマーカーのvalidationが進行している。
さらに、糖尿病性腎症の病態・予後を反映する病期分類を目指し、糖尿病性腎症の病期分類の改訂にむけた提言案を示した。これは、1.多施設共同による事前登録前向き研究、2.メタ解析、3.長期観察を行った本邦の腎生検施行症例の予後解析を根拠として作成した。アルブミン・蛋白尿ならびに腎機能を病期分類の基本とすえ、腎予後、心血管病変、総死亡を反映する提言案となった。加えて、特異的な早期診断マーカーの開発、病理診断等今後解決すべき課題を提言した。
本研究では、糖尿病性腎症の評価のためのバイオマーカー開発の基盤研究を行った。CCN2, Collagen IV, Angiotensinogen (AGT), MCP-1, L-FABPを最終候補として選定し、レジストリーの収集尿検体も用いてパネルモデルを検討した。さらに、末梢血トランスクリプトーム解析、尿中エクソゾーム解析、尿のメタボローム解析が進行し有力なシーズが開発されている。さらに、糖尿病性腎症の新規治療法の開発も重要な課題である。カロリー制限模倣薬、ケモカイン受容体阻害薬、AGEs-DNAアプタマーおよびGLP-1受容体アゴニストの解析が進行している。一部はすでに介入試験が臨床的に開始されている。