糖尿病性腎症の進展予防にむけた病期分類-病理-バイオマーカーを統合した診断法の開発

研究班長のご挨拶

研究班長 和田隆志

 慢性腎臓病(CKD)という概念が2002年にできて10年以上が経過しました。現在、日本の成人人口の約13%、1330万人がこのCKDにあたることが報告されています。病気が進行し、最終的に腎臓移植や人工透析が必要な状態、すなわち末期腎不全にいたる患者さんも増加しています。この現状は日本だけではなく世界でも同様の傾向となっています。さらに、CKDはその経過中に心血管疾患を発症するリスクが高く、末期腎不全のリスクとあわせ国民の健康を脅かしています。そのため、CKDの克服は医学的、社会的に喫緊の課題であることが認識されるようになっています。こういった背景のなか、さまざまなCKD対策がとられていますが、新たに透析を開始される末期腎不全の患者さんの数はまだまだ増加しています。そのため、CKD診療の向上や患者さんの福音につながるさらなる取り組みが必要です。

 新規透析導入の原疾患の第1位は1998年以来、糖尿病性腎症です。さらに、糖尿病性腎症を原疾患とする透析患者さんが2011年に全体の36.6%と第1位になりました。したがって、糖尿病性腎症の早期発見、早期治療、発症および進行の予防がCKD対策やその診療においてとても重要な課題となっています。さらに、現在の日本は超高齢化社会に入っています。透析に導入される患者さんも徐々に高齢化しています。そのような背景のなか、加齢や高血圧などが重要な因子となる腎硬化症を原疾患とした透析患者さんも増えています。このような糖尿病性腎症や腎硬化症の対策が有効に行われるためにも、日本の患者さんに関する情報が必要となります。私たちの研究班では、糖尿病性腎症や腎硬化症の患者さんの状態を調べています。また、同意が得られた患者さんに協力していただき、臨床研究もしています。多施設共同で臨床研究を行うことにより、診断や治療上何が課題であるか明らかにすることができます。また、将来にむけた新しい診断法や治療法開発のための基礎的な研究も支援しています。こういった取り組みに加えて、広く国民の皆様にも正しい知識をもっていただくための活動(市民公開講座、ホームページでの情報提供など)もしています。

 私たちの研究班はこれらの活動を通じて、糖尿病性腎症や腎硬化症と闘っている患者さんや国民のみなさんに貢献したいと思っております。開設したばかりの新しいホームページですが、ご活用いただければ幸いです。

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